「てんさい糖は体に悪い」「上白糖より健康的」「血糖値が上がりにくく、体を温める」――健康を意識して砂糖を選ぶ人の間で、こうした情報が広まっています。しかし、てんさい糖は本当に体への負担が少ないのでしょうか。糖尿病や肥満が気になる人でも、安心して使えるのでしょうか。
2026年10月時点で確認できる農林水産省の砂糖に関する資料、文部科学省の食品成分データベース、厚生労働省の健康情報、世界保健機関(WHO)の指針を照らし合わせると、見えてくるのは「てんさい糖だから危険」という単純な話ではありません。健康への影響を考えるうえで重要なのは、砂糖の種類だけでなく、糖質の量、日々の摂取量、食生活全体です。
【結論】てんさい糖は体に悪い?健康への影響と気になる真相

結論からいえば、てんさい糖は、適量を料理などに使う限り、特別に避けるべき砂糖ではありません。一方で、天然由来であることやオリゴ糖を含むことだけを理由に、上白糖より健康に優れていると判断するのも適切ではありません。
てんさい糖は、北海道などで栽培される甜菜(てん菜)、いわゆる砂糖大根を原料とする砂糖です。主成分は砂糖の一種であるショ糖で、製品によっては糖蜜由来の成分やオリゴ糖なども含まれます。
砂糖を摂りすぎると、食事全体のエネルギー摂取量が増え、体重増加につながる可能性があります。また、糖類の摂取量や摂取頻度は、虫歯のリスクにも関係します。こうした問題は、てんさい糖だけに当てはまるものではありません。
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」は、砂糖の過剰摂取が肥満につながることや、摂取量だけでなく摂取回数も虫歯予防に関係することを解説しています。世界保健機関(WHO)も、砂糖などの遊離糖類を摂りすぎないよう勧めています。
てんさい糖が「体に悪い」といわれる主な理由てんさい糖について健康上の不安が語られる背景には、主に次の3つの論点があります。
- 砂糖なので糖質を含む:てんさい糖にもエネルギーがあり、摂取量によってはエネルギー過多につながります。
- オリゴ糖の健康効果が誇張されやすい:オリゴ糖を含むことと、整腸効果や血糖値への影響が十分に実証されていることは別問題です。
- 自然な茶色や原料のイメージが健康効果と結び付けられやすい:色や原料だけでは、健康への優劣は判断できません。
農林水産省の「砂糖Q&A」では、砂糖を摂ることだけで特定の病気が直接引き起こされるとする単純な見方を戒めています。ただし、これは砂糖を無制限に摂取してよいという意味ではありません。過剰摂取による肥満や虫歯のリスクは、別に考える必要があります。
つまり、てんさい糖のデメリットは、特殊な毒性があるという話ではなく、基本的には砂糖に共通する摂りすぎの問題です。
【徹底比較】てんさい糖・上白糖・きび砂糖の違いを栄養成分から検証
てんさい糖と上白糖、きび砂糖の違いを理解するには、原料、製法、風味、栄養成分を分けて考える必要があります。農林水産省は、砂糖を製造工程の違いによって、糖蜜を分離する「分蜜糖」と、糖蜜を含んだ状態で仕上げる「含蜜糖」に大別しています。
てんさい糖ときび砂糖は原料が異なります。一般に、てんさい糖は甜菜、きび砂糖はサトウキビから作られます。一方、上白糖は、てん菜やサトウキビを原料として作ることができる、国内で広く利用されている砂糖です。
| 比較項目 | てんさい糖 | 上白糖 | きび砂糖 |
|---|---|---|---|
| 主な原料 | 甜菜(てん菜) | 甜菜またはサトウキビ | サトウキビ |
| 特徴 | 商品によって糖蜜由来の成分やオリゴ糖を含む | 白色でしっとりした質感。クセが少なく幅広い料理に使える | サトウキビ由来の風味やコクが特徴 |
| エネルギー(100g当たり) | 357kcal | 391kcal | 製品によって異なる |
| 炭水化物(100g当たり) | 96.9g | 99.3g | 製品表示を確認 |
| 食物繊維(100g当たり) | 8.3g | 0g相当 | 製品によって異なる |
| 選ぶ際のポイント | オリゴ糖の含有量や栄養成分表示を確認する | 味や使いやすさ、計量のしやすさで選ぶ | 風味や製法、栄養成分表示で選ぶ |
数値の出典は、文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」に対応する食品成分データベースです。同データベースは2026年6月9日に更新され、2026年3月公表の正誤表にも対応しています。
表のてんさい糖は「てんさい含蜜糖」、上白糖は標準的な食品成分値です。市販商品の栄養成分表示と必ずしも一致するわけではありません。きび砂糖も製品ごとに製法や成分が異なるため、特定の数値をすべての商品に当てはめることはできません。
カロリーや糖質は、実際に使う量で比較する100g当たりの数値を見ると、食品成分表上のてんさい含蜜糖は上白糖よりエネルギーが低くなっています。ただし、普段の料理で使う量は100gよりずっと少ないことがほとんどです。
例えば、食品成分表の数値を単純計算すると、5g当たりのエネルギーは、てんさい含蜜糖が約18kcal、上白糖が約20kcalです。少量で比較した場合、差は約2kcalにとどまります。
また、てんさい含蜜糖に含まれる食物繊維の標準値を、そのままオリゴ糖の量と読み替えることはできません。食物繊維、糖質、糖類、オリゴ糖は、それぞれ異なる概念です。
健康を目的に砂糖を選ぶなら、色の濃さや原料のイメージよりも、実際に使う量と商品ごとの表示を確認するほうが合理的です。
【血糖値・糖尿病】てんさい糖なら太りにくい?健康効果の誤解を整理
てんさい糖についてよくある疑問が、「血糖値が上がりにくいのか」「糖尿病でも安心して使えるのか」という点です。
ここで押さえておきたいのは、てんさい糖も糖質を含む砂糖であり、摂取すれば血糖値に影響する可能性があるということです。オリゴ糖が含まれている商品であっても、砂糖としての性質がなくなるわけではありません。
血糖値への影響は、砂糖の名前だけでは決まらない食事をすると、消化吸収された糖質などの影響で血糖値が変化します。その変化は、食べた食品の種類や量、食事全体の構成、個人の代謝状態などによって異なります。
てんさい糖には血糖値を上げにくいという説明が見られますが、すべての商品に共通する効果として考えるのは適切ではありません。てんさい糖を使えば血糖値の上昇を避けられる、あるいは上白糖より明確に安全だと、一律に判断できるものではないからです。
GI値(グリセミック・インデックス)は食品を摂取した際の血糖値の上がり方を比較する指標ですが、商品や試験条件などによる違いがあります。単一のGI値だけで、砂糖の健康上の優劣を決めることにも限界があります。
てんさい糖と糖尿病の関係糖尿病は、砂糖を一度食べたから発症するという単純な病気ではありません。遺伝的要因、体重、身体活動、年齢など、さまざまな要因が関係します。
一方で、砂糖を多く使う食生活によってエネルギー摂取量が増え、体重増加や肥満につながれば、健康上のリスクを高める可能性があります。砂糖の過剰摂取を避ける意義は、この点にもあります。
糖尿病のある人がてんさい糖を使う場合も、上白糖とは別枠で自由に摂取できるわけではありません。砂糖を加えた量を食事全体の糖質・エネルギー管理に含め、医師や管理栄養士から受けている指示に従うことが基本です。
体重管理についても同じです。てんさい糖に替えるだけで太りにくくなるわけではなく、砂糖を使う総量、間食、飲料、食事全体のエネルギーバランスが関係します。
【オリゴ糖の効果】整腸作用は本当?「体を温める」説の科学的根拠
てんさい糖が健康的だと紹介される際、よく挙げられるのがオリゴ糖です。商品によっては、ラフィノースやケストースなどのオリゴ糖が含まれています。
オリゴ糖は糖の一種で、種類によっては腸内細菌に利用される性質があります。そのため、特定のオリゴ糖には腸内環境や便通との関係が研究されているものがあります。
ただし、オリゴ糖の研究結果を、そのままてんさい糖全般の健康効果に置き換えることはできません。オリゴ糖の種類、摂取量、製品の配合、研究対象などを区別する必要があります。
オリゴ糖の含有量は商品によって違うてんさい糖という名称だけで、含まれるオリゴ糖の量が一律に決まっているわけではありません。例えば、販売元の製品情報では、大東製糖の「てんさいのお砂糖」は100g当たりラフィノース0.8g、ホクレンのてんさい糖を扱う販売商品ではオリゴ糖5gと表示されている例があります。
このように製品間で数値に差があるため、「てんさい糖にはオリゴ糖が豊富に含まれる」と一括りにするのは正確ではありません。商品によっては、少量を使っただけでは摂取できるオリゴ糖の量もごくわずかです。
仮にオリゴ糖が100g当たり5g含まれる商品でも、3g使った場合に摂取できるオリゴ糖は約0.15gです。整腸効果を期待するなら、商品の含有量と、研究で確認された摂取量を区別して考える必要があります。
「てんさい糖は体を温める」は科学的に証明されている?「寒冷地で育つ甜菜から作られるため体を温める」「白い砂糖は体を冷やす」といった説明もあります。しかし、原料が育った地域や砂糖の色だけで、食べた人の体温がどう変化するかを判断することはできません。
てんさい糖の摂取によって、体の深部温度や手足の皮膚温度が改善するという健康効果は、確立した科学的根拠があるとはいえません。冷え対策を目的に、てんさい糖を積極的に摂ることを勧める根拠は乏しいのが実情です。
体の冷えが気になる場合は、食事全体のバランス、十分なエネルギー摂取、身体活動、衣服や室温なども含めて考えることが大切です。てんさい糖を選ぶことだけで冷えが改善すると期待するのは避けましょう。
【摂取量の目安】てんさい糖は1日何グラムまで?WHOと日本の基準
てんさい糖の適量を考えるとき、参考になるのがWHOの遊離糖類に関する指針です。WHOは、成人・子どもともに遊離糖類からのエネルギー摂取を総エネルギーの10%未満に抑えることを勧め、さらに5%未満に減らすことも推奨しています。
1日2,000kcalを摂取する場合、10%は200kcal、5%は100kcalです。糖質1g当たり約4kcalとして換算すると、遊離糖類は1日50g未満、さらに減らす場合は25g未満が目安になります。
ただし、この数値はてんさい糖だけの摂取上限ではありません。遊離糖類には、調理や加工の際に加える砂糖やシロップ、はちみつ、果汁などに含まれる糖類も含まれます。菓子や清涼飲料などから摂る糖類も考慮する必要があります。
また、日本の厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、炭水化物全体について目標量が設定されていますが、炭水化物全体と砂糖などの糖類は同じものではありません。厚生労働省のe-ヘルスネットの解説では、日本では糖類の摂取実態に関するデータが十分でないことなどから、具体的な目標量は設定されていないと説明されています。
毎日の食事ではどう考えればよい?てんさい糖を使う際は、次のような考え方が実践的です。
- コーヒーや紅茶に入れる砂糖は、味を確認しながら少しずつ減らす。
- 料理に使った砂糖だけでなく、菓子や甘い飲料、加工食品に含まれる糖類も意識する。
- 健康目的で砂糖を替える場合も、使用量を増やさない。
- 糖尿病などで食事管理をしている場合は、一般的な目安よりも個別の医療・栄養指導を優先する。
WHOの数値は、砂糖を何グラムまで食べても安全だと保証する境界線ではありません。日々の食事を見直すための指標として活用することが大切です。
【デメリットの実態】栄養成分表示の見方と失敗しない選び方
てんさい糖の購入時には、商品名や「オリゴ糖入り」「ミネラルを含む」といった説明だけで判断せず、栄養成分表示を確認しましょう。
消費者庁によると、一般用加工食品では、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の表示が義務付けられています。一方、糖質、糖類、食物繊維、ミネラルなどは、任意表示となる項目があります。
栄養成分表示で確認したい4つの項目- エネルギー:普段使う量に換算して、カロリーを把握します。
- 炭水化物:糖質と食物繊維を含む数値です。炭水化物が少し低いだけで、健康効果が大きいとは限りません。
- 糖質・糖類:表示されている場合は確認します。糖質と糖類は同じ意味ではありません。
- オリゴ糖・ミネラル:表示がある場合は含有量を確認し、商品説明だけでなく数値を基準に判断します。
糖質は一般に、炭水化物から食物繊維を差し引いて考えます。ただし、食品の表示方法や成分値の算出方法には違いがあるため、商品間を比較する際は表示単位と測定対象をそろえる必要があります。
てんさい糖のメリットとデメリットをどう評価する?てんさい糖のメリットは、独特の風味や甘さを料理に生かせること、商品によってはオリゴ糖などを含むことです。原料や製法にこだわって砂糖を選びたい人にとっては、選択肢の一つになります。
一方、デメリットは、砂糖であるため摂りすぎに注意が必要なこと、商品によって栄養成分が異なること、オリゴ糖を含むという理由だけで健康効果を期待しすぎる可能性があることです。
また、上白糖より色が濃い砂糖や、ミネラルが残る砂糖を選んだからといって、食事全体の栄養バランスが自動的に改善するわけではありません。農林水産省も、砂糖に含まれるミネラルの量は限られるため、ミネラルの摂取源としてはほかの食品を活用するほうが効率的であると説明しています。
てんさい糖が向いているのは、風味や原料にこだわりたい人、オリゴ糖の含有量を確認したうえで商品を選びたい人です。一方、糖質やエネルギーの摂取量を減らしたい人、血糖値の管理を優先する人は、砂糖の種類を替えることだけでなく、使用量や食事全体を見直す必要があります。
【てんさい糖は体に悪いのか】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:てんさい糖は上白糖より体にいいですか?
A1:一概にはいえません。てんさい糖にはオリゴ糖などを含む商品がありますが、砂糖であることに変わりはなく、摂取量も重要です。上白糖より必ず健康に優れていると判断できるわけではありません。
Q2:てんさい糖を食べると太りますか?
A2:てんさい糖にもエネルギーがあります。使う量が多く、食事全体のエネルギー摂取量が消費量を上回る状態が続けば、体重増加につながる可能性があります。てんさい糖に替えるだけで太りにくくなるわけではありません。
Q3:糖尿病の人はてんさい糖を食べても大丈夫ですか?
A3:てんさい糖も糖質を含むため、血糖値への影響を考える必要があります。使用する場合は食事全体の糖質量に含め、主治医や管理栄養士の指示に従ってください。
Q4:てんさい糖のオリゴ糖には整腸効果がありますか?
A4:オリゴ糖の種類によっては、腸内細菌や便通との関係が研究されています。ただし、てんさい糖の商品ごとに含有量が異なり、少量の使用で十分な効果が得られるとは限りません。
Q5:てんさい糖は体を温める効果がありますか?
A5:てんさい糖を摂ることで体温が上がる、冷えが改善するといった効果は、確立した科学的根拠があるとはいえません。冷え対策を目的に選ぶことは勧められません。
Q6:てんさい糖は1日何グラムまで食べてよいですか?
A6:てんさい糖だけを対象にした一律の上限値はありません。WHOは遊離糖類を総エネルギーの10%未満、望ましくは5%未満にすることを推奨しています。これは、てんさい糖だけでなく、ほかの食品や飲料に含まれる遊離糖類も含めた考え方です。
てんさい糖は体に悪いのかという疑問に対する答えは、てんさい糖そのものを特別に危険視する必要はないものの、健康効果を過大評価するべきでもない、というものです。
文部科学省の食品成分データベースでは、てんさい含蜜糖と上白糖でエネルギーや炭水化物の標準値に差があります。しかし、実際の商品には成分の違いがあり、通常の使用量でのカロリー差も限られます。オリゴ糖についても、含有量は商品ごとに確認する必要があります。
血糖値や糖尿病、肥満が気になる場合は、てんさい糖を選ぶことだけで安心せず、砂糖全体の摂取量、甘い飲料や間食、食事のバランスを見直しましょう。上白糖やきび砂糖も含め、味や用途に合わせて使い分けながら、必要以上に砂糖を増やさないことが現実的な対策です。
2026年時点で確認できる公的資料からも、健康的な砂糖選びの基本は変わりません。「てんさい糖だから健康にいい」と考えるのではなく、栄養成分表示を読み、使う量を意識し、自分の健康状態に合った選択をすることが、失敗しないための判断基準です。